低侵襲手術外来

低侵襲手術における専門外来を毎週水曜日に開設いたしました。皮膚を切る範囲を減らしたり、出血量を少なくすることで、患者さんのからだへの負担を小さくした手術のことを低侵襲(ていしんしゅう)手術といいます。手術と聞くと、からだに大きく傷が残ったり、たくさんの負担がかかるイメージがありますが、当院の消化器センターでは“腹腔鏡(ふくくうきょう)”を使った低侵襲手術を積極的に行なっています。

腹腔鏡手術とは

腹腔鏡手術は、従来の開腹手術に比べてキズを小さくする手術方法です。おなかの中にカメラを挿入し、モニター(テレビ画面)を見ながら手術を行います。術後の傷の痛みが少ない、術後の傷口が目立ちにくい出血量が少ないなど、患者さんにとって多くの利点があります。しかし、腹腔鏡手術には高度な技術が必要です。

腹腔鏡手術

長所
  • 傷口が小さく目立たない、美容的
  • 痛みが少ない
  • 免疫能低下が少ない
  • 術後の回復が早い、入院期間が短い
  • 高齢者の身体への影響が小さくなる
  • カメラで拡大して見えるので細かい操作が可能
短所
  • 技術的に難しい
  • 手術時間が長くなる
  • 炎症の程度、おなかの中の癒着、癌の進行程度などによっては出来ない

腹腔鏡手術では、手術手技が安全に行われることを目的に、日本内視鏡外科学会が定める技術認定制度があります。この技術認定医を取得することは現在非常に困難となっており、各施設のエキスパート(指導医)が試験を受けても3割ほどしか合格できない狭き門となっています。消化器外科の資格の中では、最も難易度が高いため、外科医はなんとかこの技術認定医の資格をとるために日々、切磋琢磨しています。

当院では日本内視鏡外科技術認定医が手術および指導を行っております。腹腔鏡手術についてのご相談、ご希望がございましたら、当外来にて詳しくご説明させて頂きます。そのうえで必要な場合には、専門性を持ったスタッフが低侵襲手術である腹腔鏡手術をご提供させて頂きたいと考えております。

蛍光ガイドと鮮明な4K・3Dカメラを用いた腹腔鏡システム導入(カールストルツ腹腔鏡システム IMAGE1 S)

消化器外科手術領域において、腹腔鏡手術は広く一般化されています。近年ではインドシアニングリーン(以下ICG)を用いた蛍光ガイド下腹腔鏡手術の有用性が提唱されています。ICGとは、元来、肝機能の評価目的に広く用いられてきた薬剤ですが、昨今、ICGが蛍光色素であるという特性が注目され、腹腔鏡下手術において応用されています。特に、消化器外科手術領域では「組織・腫瘍の位置の把握」「組織血流評価」「切除範囲の決定」など、これまで判断に難渋していた情報を可視化し、多角的に評価することが可能となりました。

当院においても、2023年11月より、高画質4Kフルカラー・3Dカメラ及び蛍光ガイドシステムを搭載した腹腔鏡ユニット “IMAGE1 S” を導入し、安全かつ高精度の手術を施行しております

対象とする主な疾患

対象疾患は多岐にわたります

急性虫垂炎、胆嚢炎、胆石症、胆嚢ポリープ、鼠径ヘルニア、肝嚢胞などの良性疾患、大腸癌、早期胃癌、肝臓癌、後腹膜腫瘍、GISTなど

腹腔鏡下胆嚢摘出術

適応疾患:胆石症による胆嚢炎、胆嚢ポリープ

  • 胆石症とは消化酵素である胆汁が通過する胆道系に結石が形成される疾患の総称です。その中で胆嚢(たんのう)内にできた結石を胆嚢結石症と言います。胆嚢結石が原因となり、右季肋部痛、発熱、悪心、嘔吐などの症状を引き起こす可能性があります。初期治療として絶食や輸液、抗菌薬、鎮痛薬の投与を行い、症状を改善させた後に待機的に手術を検討します。一方、胆石症に伴う症状が強い場合(急性胆嚢炎)には緊急手術が必要となる可能性があります。
  • 胆嚢ポリープは、胆嚢粘膜面に認められる限局性の隆起性病変です。通常は無症状で、検診の超音波検査などで指摘されることが多い疾患です。胆嚢ポリープは基本的には良性疾患(がんではない)ですが、10mmを超える病変の場合には癌化のリスクもあり、手術の適応となります。
平均手術時間 約90分
平均在院日数 5日間程度

腹腔鏡下虫垂切除術

適応疾患:急性虫垂炎

急性虫垂炎は糞石や食物残渣、リンパ組織の腫大、腫瘍などにより、虫垂内で閉塞が起こり、二次的に感染が加わることで発症します。症状はみぞおち・臍周りの痛み、食欲不振、悪心・嘔吐などから始まり、その後数時間に痛みが右下腹部に移動し、発熱を伴うことがあります。軽症の場合には抗菌薬投与での治療が推奨されますが、中等症・重症の場合には緊急手術が必要となる事があります。また抗菌薬投与で改善した場合も繰り返す可能性があり、症状が落ち着いている状況で待機的に手術を行うこともあります。

平均手術時間 約60分
平均在院日数 4日間程度

腹腔鏡下結腸切除術

適応:大腸癌

大腸(結腸、直腸)粘膜から生じる癌です。癌の浸潤が粘膜下層にとどまる早期癌と、筋層以下に浸潤した進行癌に分けられ、日本人はS状結腸と直腸に発生しやすいと報告されています。早期癌では無症状、便潜血検査陽性を契機に診断される事が多く、進行すると腹部の膨満感や便秘、下痢、血便、便柱狭小化、排ガス停止などの症状が起こります。

早期大腸癌は内視鏡治療の適応となりますが、進行癌では外科的切除(リンパ節転移を伴う腸管切除)が必要となります。

平均手術時間 約180分
平均在院日数 10日間程度

腹腔鏡下鼠径ヘルニア根治術

適応疾患:鼠径ヘルニア(脱腸)

鼠径ヘルニアとは、足のつけ根が膨隆する疾患です。筋肉の脆弱化(弱くなること)が原因で乳幼児と壮年期以降に好発します。鼠径ヘルニアは腹圧に大きく影響され、立ち上がったときやおなかに力を入れたときに足の付け根が膨らみ、不快感や痛みなどの症状が生じます。 自然治癒は期待できず、手術(メッシュという人工物を用いたでの筋肉の補強)が必要になります。

平均手術時間 約90分
平均在院日数 4日間程度

近隣医療機関の先生方へ

患者様の緊急でのご紹介、低侵襲手術外来のご予約相談は医療連携室までお気軽にお問い合わせください。また、当院消化器センターは逆紹介、かかりつけ医の推奨行っております。近隣医療機関の先生方と密接に連携を取りながら、患者様の診療を行います。
ご不明点等がございましたら、当院地域医療連携室までお問い合わせください。

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